2013年2月17日日曜日

単位の変換、できますか?

昨日は久しぶりに永久機関ネタがTLに流れていました。どうもアレゲな方のポストが発端だったようで波紋が広まった様ですね。発端となった方のTwitterを見るとなんだかアレゲな政治オーラが漂っていたので私はそっと閉じました。

閉じる直前に1件、気になったポストがありました。先日、ロシア領に落下した隕石についておよそ、「直径17メートル」、「質量1万トン」との事に触れ、そんな重い物質は地上には無くて何かとんでもない物質であり超合金がどうしたこうしたみたいなポスト。

まあ、このポストのきっかけはそんな小さなネタではありますが、私が学生さんを見ていても、特に情報系の学生さんは単位の取り扱いにとても心配になる事が頻繁にあります

古くは私が情報系の大学院にお世話になりはじめた頃に、ストークスの方程式に登場する変数の単位をまったく考えもせずに本に書いてあったと言って流体のシミュレーションソフトを実装する学生には正直呆れたものです(きちんと単位を見る事を教えようとしても、そんなのどうでもいいからプログラムが間違っていると思うんだヒントくれよ!みたいな感じだったな…)。

と、言う訳でせっかく簡単な単位の変換のネタを拾ったので丁寧に計算してみる事にします。変換できない方は参考になれば幸いです。

さて、そもそも直径17mで質量1万トンのニュースソースを探してみましょう。日本語で検索するとかの朝日新聞社の記事がででーんとヒットしました。
相変わらずニュースソースにリンクすらしない日本の自称報道機関とは(;´∀`) と、言う訳で英単語("russia meteor NASA 17 10000")でググるとNASAの元記事と思しきものが簡単にヒットしました。
The estimated size of the object, prior to entering Earth's atmosphere, has been revised upward from 49 feet (15 meters) to 55 feet (17 meters), and its estimated mass has increased from 7,000 to 10,000 tons.
先の記事がさすがか日本の自称報道機関である天下のアサヒ新聞社様の記事であったのだな、と分かります。時事を可能な限りセンセーショナルに報道したいだけの日本の自称報道機関の姿勢は是正されねばなりません。あとソースのrefくらいつけろこのバカタレが

と、言う訳で推定サイズ15から17メートル推定質量7000〜10000トンの隕石について、その密度から対象物質を想像するのに必要な単位の変換をしてみる事にしましょう。

先ず、この隕石の密度を与えられた値と単位から簡単に組み立てます。密度と言うのは、体積あたりの質量を表す為に確立された組み立て単位ですから、
質量 ÷ 体積
となります。

ここで、質量は7000〜10000トンと与えられた情報そのままで使えますが、体積がわかりません体積はわかりませんが直径は与えられています

単位を良く見るのです。直径とは線形な長さを表していて、一般には球形(とみなせるもの)の中心を通る表面を繋ぐ直線長さの事です。今回は使いませんが面積は長さの二乗の単位次元を持っています。そして今回必要な体積は長さの三乗の単位次元を持っています。

単位の組み立てには、扱いに必要な単位の持つ意味
  • その単位が何についてを計る目的のものであるのか(長さであるとか質量であるとか)
  • 何を基準にしているのか(SI単位系なのかcgs単位系なのか或いはまた別の基準か)
を確認し、ついでに、与えられた値と求めたい値の単位について
  • その組み立て([kg/㎥]とか[frames/second]とか)
  • 要素となっている単位の次元(㎥が現れていたらそれはmの三乗の次元を持っていると相関性を持って捉える)
を理解します。すると、今回であれば[m]によって組み立てられる直径とその三乗の次元となる[㎥]の相関性に気付けます。実際、体積は直径から求められます。但し、今回想定するのは球形であって立方体ではありませんから基準となる長さを単純に三乗したのでは球形よりも角のある立方体の分だけ大きくなってしまいます。

一般には単位の相関性にさえ気付ければ、世の中には科学的思考により既にたくさんの計算方法が法則として確立済みで、法則の定義を見つければ上手く値を変換できるでしょう。今回であれば球の体積@Wikipediaを参照してみましょう。
V = ( 4 / 3 ) * π * r ^ 3
だそうです。慣例として体積はV(:Volume)、半径はr(:radius)、円周率はπで表されます。なぜ球形の体積がこの式で求められるのかはπについて調べてみると分かりますが、それはまあ各自で調査の旅を楽しんで下さい。

と、言う訳で、推定直径15から17メートルの隕石体積は、
V_min [㎥] = ( 4 / 3 ) * π * 15 ^ 3 ≈ 1.4e+3
V_max [㎥] = ( 4 / 3 ) * π * 17 ^ 3 ≈ 9.9e+2
と求められます。推定体積9.9e+2〜1.4e+3[㎥]

さて、ここでe+2とかe+3が分からない方も居ると思います。これは計算機における数値表現の代替で、本来は e+2 ではなく ×10^2 とか書きたいのです。これにしたって代替表現で、本当は10の二乗を書きたいのですが平文では書けないので慣例として上付き文字列は直前に^(ハット)を用いるのです。今回は登場しませんが、化学式などで下付き文字列を扱いたい場合は_(アンダースコア)を同様に用いる慣例です。

なお、1.4e+3の様な数値の表し方は指数表記と呼びます。指数はexponentialと英語で言うので記号にeが使われています。但し、数式に通常の計算式の一部としてeが現れた場合は似ているがまた別の意味で使われるネイピア数の事なので注意して下さい。

ついで、「ほぼ等しいと見做せる」で日本だけで使われる≒と類似の数学記号です。なぜ日本のみでは≒が使われる機会が多く見られるのかまでは知らないので興味を持った方は調査の旅を楽しんで下さい。

もう1つ、V_minとV_maxが推定堆積の最小と最大である事はわかっても、どうして答えをe+3で統一したりせずに一方はe+3、他方はe+2としているのか腑に落ちない方も居るかもしれませんので解説します。概念を変数で扱っているうちは構わないのですが、具体的な数値を当てはめた答え(これを数式の特殊化特解を求めるとも言います。C++プログラミングでもテンプレートの特殊化なんて似た用語がありますね)を求める際には、変数に当てはめる数値の精度に気をつけなればなりません。

数値の精度とは、例えば目盛りが10g単位までしか無いキッチン用の秤では、どんなに慎重に目視してもせいぜい1g単位までしか読み取れないでしょう。しかし、秤に乗っかっている物質はあなたが読み取れた重さではなく、本来の真の重さを持っています。この様に、人間が現実世界での計測を元に値を得ると、本来の物理量に対して一定の精度で切り取った計測値しか得られません。今回はソースとしたNASA発表の数値が高々2桁の精度しかありませんので、数値を2桁で表す事で数値の精度を統一しているのです。(「高々」の正しい意味に自信が無ければこれも調査の旅を楽しんで下さい。)

さて、ではいい加減に隕石の推定密度を計算してみましょう。

d_min [kg/㎥] = m_min / V_max = 7.0e+3 / 9.9e+2 ≈ 4.8e+3
d_max [kg/㎥] = m_max / V_min = 1.0e+4 / 1.4e+3 ≈ 1.0e+4
m_minとm_maxは質量で、慣例として記号m(:mass)を使いました。ここで、d_minはm_minとV_maxを組み合わせている事、d_maxはm_maxとV_minを組み合わせている事に注意して下さい。ニュースソースから与えられた直径と質量の範囲の相関性は明示的にはわかりませんから、計算上は最小、最大となる組み合わせで話を進めて置きます。もしもそれが気に入らないのなら、与えられた値の中央値を採用して概算するのも良いでしょう。

さて、これで密度は求められました。しかし単位が[kg/㎥]です。一般には物質の密度の単位は[g/(cm^3)](=1立方センチメートルあたりの質量)で扱うことが1つの基準となっていますから、単位を変換してみましょう。

先ずは、[kg]を[g]に変換してみましょう。kSI接頭辞で1000倍を意味します。ちなみにSI接頭辞ではkよりも大きな倍率からは大文字、k以下の倍率では小文字が使われています。他のSI単位で使用する文字と被らない様に配慮されています。

と、言う訳で、
X [kg] = X [ 1000 * g ] = X * 1000 [g]
です。[kg]→[g]の変換値を1000倍すれば良いことがわかります。

キログラムとグラムの変換くらいであれば、この様にしっかりと整理して組み立てて考えなくても計算できる方も多いかもしれません。では、[kg/㎥]を組み立てていて変換の必要な他方、[1/㎥]→[1/(cm^3)]は間違えずにできますか?

先ず、そもそもの単位の組み立てから、[kg/㎥]=[kg * (1/㎥)]である事はその定義や密度を求めた際に気が付けているでしょう。では、[kg]→[g]と同様に[㎥]→[cm^3]もわかれば最終的に単位の変換式も組み立てられる事にも気が付きましょう。

cはSI接頭辞で100分の1を意味します。よって、
Y [m]
 = Y [ 1 * m ]
 = Y [ { 100 * (1/100) } * m ]
 = Y * 100 [ (1/100) * m ]
 = Y * 100 [cm]
です。[m]→[cm]の変換は値を100倍すれば良いことがわかります。

算数に慣れていないと × 1 をどこからともなく取り出して都合よく 100 × (1/100) に分解するプロセスがややトリックに感じられるかもしれませんが、計算上の工夫であって無いものをある事にしたのではなく、もともと無限にあって省略されたもののうちの1つを表記して変形したに過ぎないと考えると良いかもしれません。算数の問題の掛け算の順序は文脈から読み取らねばならないなどと宣う非科学的な尖兵の言葉に騙されて科学的思考を止め悪い意味での文系脳に陥らない様に注意しましょう

さて、これで[m]→[cm]の変換はできましたが、[㎥]→[cm^3]の変換はどうしたら良いでしょう?単位の次元を素直に適用すれば良いのです目的の[㎥]→[cm^3]は[m]→[cm]に対してきっかり三乗の次元を持っていますから、先の変換式をそのまま三乗しましょう。
( Y [m] ) ^3 = ( Y * 100 [cm] ) ^3
Y^3 [m^3] = Y^3 * 100^3 [cm^3]
Y^3 [m^3] = Y^3 * (10^2)^3 [cm^3]
Y^3 [m^3] = Y^3 * 10^6 [cm^3]
Y^3 [m^3] = Y^3 * 1.0e+6 [cm^3]
Y' [m^3] = Y' * 1.0e+6 [cm^3]
と、言う訳で[㎥]→[cm^3]の変換値を1.0e+6倍すれば良いことがわかります。桁が大きくなると値を把握し難くなるので表記を指数表記にしました。

また、最後の式でY^3をY'に置き換えて居ますが、Y^3[m^3]とY'[m^3]の関係次元的に健全で、具体的に数値を当てはめて計算してみても問題ありません。もともとYなる値は感覚的にわかりやすいように単位だけでなく具体的な値の例示をする為に式中に明記したです。この値Yの単位は[m]でしたから、[m^3]とするにはY^3となり、今回は式の左右の変換ではそもそもどちらも三乗の単位次元を持っていますから新たにその代表する値の例示も一乗の値Yではなく三乗の値Y'を定義しただけの事です。整理して考えてみればすべてが明瞭である事に気付けるでしょう。


これで、あとはこれまでに求めた変換の式を組み立てれば[kg/㎥]→[g/(cm^3)]も変換できます。
Z [kg/㎥] = Z * (1000) * { 1 / (1.0e+6) } [g/(cm^3)]
Z [kg/㎥] = Z * (1000) * (1.0e-6) [g/(cm^3)]
Z [kg/㎥] = Z * (1.0e+3) * (1.0e-6) [g/(cm^3)]
Z [kg/㎥] = Z * (1.0e-3) [g/(cm^3)]
よって、
d_min ≈ 4.8e+3 [kg/㎥]
 = 4.8e+3 * 1.0e-3 [g/(cm^3)] = 4.8e+0 [g/(cm^3)]
d_max ≈ 1.0e+4 [kg/㎥]
 = 1.0e+4 * 1.0e-3 [g/(cm^3)] = 1.0e+1 [g/(cm^3)]
と分かります。

一般的な単位での値がわかれば、それがどの程度のものか比較して考えられます。Wikipediaにこんなページがありました。
英語が不得意でも元素を基準に考えた物質の密度になっている事は読み取れるでしょう。ついでに写真もあって楽しいですね。

この表によると、密度が4.8〜10[g/(cm^3)]の物質は化学的な意味での単体で言えば ..., Se(4.8), I(4.9), Eu(5.2), Ge(5.3), Ra(5.5), As(5.8), Ga(5.9), V(6.1), La(6.1), Te(6.2), Zr(6.5), Sb(6.7), Ce(6.8), Pr(6.8), Yb(7.0), At(7), Nd(7.0), Zn(7.1), Cr(7.2), Pm(7.3), Sn(7.3), In(7.3), Mn(7.4), Sm(7.5), Fe(7.9), Gd(7.9), Tb(8.2), Dy(8.6), Nb(8.6), Cd(8.7), Ho(8.8), Co(8.9), Ni(8.9), Cu(9.0), Er(9.1), Po(9.3), Uuh(9.3), Tm(9.3), Bi(9.8), Uup(9.8), Lu(9.8), Lr(9.8), Ac(10), Mo(10), ... とかなんとかだそうな。

上記の色付けの基準は私が思う一般人でも応用を知ってたり実際に応用製品を使っていそうな元素。中でもFeNiはこの後の話でも重要なので真っ赤。括弧内が単体物質の密度[g/(cm^3)]。

ちなみに、重ければ危険でレアな物質かと言えばそうでもなくて、知ってる人が多そうな元素の単体の密度で言えば Ag(11), Pb(11), Hg(13), U(19), Pt(21)とかなんとかとっても重いものが続く。白金は装飾品でよく使われる程度には安全だし、水銀は公害の原因にもなるけれどやや注意されながら日常で上手く利用されているものでもある。ウランは少なくとも一般の日本人には直接日常的な物質では無いけれど、放射性同位体ではないウラン238は全体の99.3%も占め、放射性同位体でそのままでも危険なウラン235は0.7%しかない。

さて、これで隕石それなりには重いが決して特異的な程の質量と言う訳では無い金属元素を主成分として含んで居そうな予想に辿り着けた方も居るかもしれない。計算上の密度の中央値は7.4[g/(cm^3)]だから、±1.0範囲に絞ればジルコニウム、アンチモン、セリウム、プラセオジム、イッテルビウム、アスタチン、ネオジム、亜鉛、クロム、プロメチウム、錫、インジウム、マンガン、サマリウム、鉄、ガドリニウム、テルビウムとか。隕石の成分について聞いたことのある方なら、幾つか思い当たったかもしれない。

さて、しかし現実に単体元素を主成分とした物質はこの世界にはあまり存在しないたいていのものは化合物になっている。ここで、既知情報として隕石の分類@Wikipediaを見てみよう。
金属鉄 (Fe) とケイ酸塩鉱物の比率で大きく3つに分類される。
ほうほう。
鉄隕石 (iron meteorite) は、主に金属鉄(Fe-Ni合金)から成る隕石である。分化した天体の金属核に由来する。
Fe-Ni合金が主成分、と。

代表的な隕石らしいオクタヘドライトについても見ると、
オクトヘドライト(Octahedrite)は鉄隕石のなかでもっとも普通の種類である。ニッケルの含有量が6%から20%と多く、ニッケル含有量の多いテーナイトと含有量の少ないカマサイトからなる、0.2mmから50mmの巾の層状の組織が見られる。
と。

ちなみに、なんで惑星の核が安定な金属で構成され、マントル、地殻では珪酸塩が成分となるかと考えてみれば、私は宇宙物理学等は素人であるが、惑星の核は大きな重力によって結合し、かつ安定でなければ惑星を構成する前に崩壊するであろうし、惑星が構成されるほどの巨大な質量の物体の核には自然と重い物質が引力により集まってできるからであろうとは推測がつく。詳しく気になる方は調査の旅をお楽しみになられたら良いと思う。

ともかく、Fe-Ni合金が主成分の場合について考えれば、FeNiの単体金属密度と安定性やTSE機械設計事務所が公開してくれていた実用合金などなどの比重データなども参考にするにFe-Ni合金主成分であれば密度は7.8[g/(cm^3)]前後に、これに珪酸塩が含まれるとなれば金属単体や安定性の高い合金に比べれば珪素と酸素による結晶構造と原子間の結合距離など考えて密度は混合されている比率に応じて相当まで下がると思われる(珪酸塩が成分となる場合についてピンと来るには化学の専門知識や経験が必要なので、そちらについて興味を持って頂けた方は調査の旅をお楽しみ下さい)。

参考として、鉄の珪酸塩である鉄橄欖石(てつかんらんせき)の比重は4.4なのだそうなので、密度もおよそ4.4[g/(cm^3)]です。比重と言うのは水の密度を基準にして他の何かの密度がそれに比べて何倍かを表す単位で、水の密度はおよそ1.0[g/(cm^3)]です。ちなみに、物質の密度は厳密には温度にも依存しますし、ものの重さの測定結果は測定環境(例えば重力と地球の大気)によっても変化しますし、国際キログラム原器に纏わる話を調べてみるのも面白いでしょうが、一般には現在地球上で水の密度はおよそ1.0[g/(cm^3)]と考えて差し支えありません。

と、まあ、単位の変換の話(これ主題)のついで、隕石の成分についても少しだけ検討してみましたが、隕石界で言えばごく一般的な主に鉄隕石であろう物質構成が想定されそうですね。

まあ…、そもそもNASAが発表した推定質量「推定」、どうやって推定したのか考えてみれば本末転倒の答えも見えてきそうですけど。(隕石の大きさ見れば分かります。その大きさに映像からの測定誤差の可能性と外形の歪さを考慮した上で、一般的な隕石の密度から現在対象としているその隕石の質量を推定値として発表しただけなんじゃ、ないかな^^;)

さてさて、ともかく、科学的思考は理系(脳)さんだけのものではありません。寧ろそれを強く意識しなければ文系学問も成り立たないでしょう。それを理解して頂ける方が増えると嬉しいです。値に常に単位を意識する事は日常の科学的思考の良い例では無いでしょうか。

0 件のコメント:

コメントを投稿